薬物療法と心理療法の向き不向き



心の自然治癒力をご説明したところで、対処療法&薬物療法と心理カウンセリング&心理療法の向き不向きをご説明しましょう。
引き続き、Aさんを例にします。

薬物療法というのは、薬の効果でAさんの身体的な状態を±ゼロにすることが大きな目的です。
つまり、通常の状態(気が遠くなる、吐き気、震えや脱力、強い恐怖感などが出ていない時の状態)に、薬の力で戻すのですね。

身体的に苦しい状態にある時には、心の自然治癒力も低下します。
体を苦しめる症状が、本来の心の自然治癒力を邪魔するからです。

例えば、本来であれば20であった回復力が、体の苦痛で-15されて5に減るかもしれません。
1日で回復する傷が、4日かかるのです。
本来が5日なら、20日。15日なら60日。
500日なら2000日です。

長期化すればするほど、回復力の差が大きな違いになりますね。

薬物療法は、このAさん本来の心の自然治癒力の20を、短時間で取り戻すお手伝いをします。
これが、薬物療法の優れているところです。

しかし一方で、及ばないところもあります。
薬物療法は、本来の心の自然治癒力を取り戻す手伝いをするのが目的なので、心についた大きな傷そのものは治せません。

「10000の傷を5の回復量で補うには2000日もかかってしまうから、薬の効果で元の20の回復量に戻します。だから、500日で自然治癒しましょう。」

というイメージです。
大きな心の傷を薬物療法だけで治療する時、非常に長い年月がかかるのはこの為です。
大きな心の傷を実際に癒しているのは、本人の自然治癒力なのですから。
薬物療法の及ばない点は、心の傷そのものに対しては手が届かないことです。

さて、ではもう片方の心理カウンセリングはというと。

もう何度か触れましたね。
心理カウンセリングは、心の回復力を飛躍的に向上させます。
カウンセラー次第で、20の回復量を、100にも1000にも、5000にもできます。
元の回復力をどれだけ向上できるかは、心理カウンセラーとクライアントがどれだけ充実した時間を過ごせるかが大切です。
クライアントの回復力を高め、原因となっている大きな傷そのものにアプローチできる。
それが、心理カウンセリングの優れている点です。

もちろん及ばないところもあります。
お気づきの方もいるかもしれませんね。
そう、心理カウンセリングでは身体に現れている身体症状を直接的に抑えることは難しいのです。
身体の苦痛を訴え、すぐにでも痛みをやわらげたいと願うクライアントに対しては、心理カウンセリングは即効性のある効果を発揮することができません。
これが、心理カウンセリングの及ばないところです。