数字に例えると



心の自然治癒力の説明として、数字で表現してみます。

仮に、車との交通事故を経験したAさんが受けた心のダメージを10000(-)としましょう。
(実際に心の傷を数値化することなどできないので、あくまで仮定のお話です。)

Aさんは道路を走る車を見ると、気が遠くなる、吐き気がする、体が震えて力が抜ける、わけも分からず強い恐怖を感じる、等の、日常生活に支障を及ぼす深いトラウマ(PTSD:心的外傷後ストレス障害)が心に残りました。

この場合、Aさんが10000の大きな傷(-)を癒すには、同じ10000という沢山の回復量(+)が必要です。
この(+)がどんなものかと言うと、例えば、恐怖心の克服、自責からの脱却、車への安心感、未来への安堵、そんなものが当てはまるかもしれません。

ですが、この10000の回復量(+)が一度に得られることは、そうあるものではないと思います。

傷つくのは簡単なのに、治るのには時間がかかる。
身体も心も同じです。

例えば、Aさんの心の自己治癒力が一日20だとすると、10000に達するには500日かかります。
この500日がAさんにとって長いか短いかは、Aさんの感じ方次第です。

心理カウンセリングは、この心の回復量(+)が向上する援助をします。
もしかしたら、一度の心理カウンセリングで1000にも2000にも回復量が向上するかもしれません。
心理カウンセリングは、Aさんの生きるちからを引き出したり、心のちからを強めたりするからです。

また、Aさん自身がこれまで気づいていなかった何かに気づくことで、新たな感情や気持ちを自覚することもあります。
複雑に絡みあっていた出来事をひとつひとつ解きほぐしていくことで、ほどくことの出来たそれぞれの出来事に、気持ちを向けられるようになるのです。

逆に、未熟な心理カウンセラーは、クライアントの回復量を向上させることができないばかりか、逆に減らしてしまうこともあります。
私に相談してくださったクライアントが体験したように、場合によっては心の傷を深めてしまうかもしれません。

10000の大きな傷(-)を回復する為の10000の回復量(+)を、短時間で得る手助けをする。
それが、心理カウンセリングの大きな効果のひとつです。